ハーモニークリニック 内科 中井秀一
脳卒中の方が、急性期→回復期→維持期の切れ目ない継続的な医療ケアを受けることはとても大切です。急性期とは発病間もなく治療を行う時期、回復期は病状も一応安定し、リハビリを本格的に開始する時期です。維持期は麻痺の回復や身の回り動作も改善し、体の動きや生活を維持していく時期で、今回はこの時期のお話しをします。
【嚥下障害】食物が上手に食べられない障害で誤嚥の原因にもなります。大切なことは歯磨きで、口の中がきれいなら多少誤嚥しても気管に雑菌が入りにくく、肺炎予防になります。また嚥下障害の程度に合わせ水分にとろみをつけたり、丸呑み可能なゼリーを使用したり工夫します。発声練習もリハビリになります。
【高次脳機能障害】会話ができない失語症、物を認識できない失認、着替えができない失行、記憶障害、注意が続かない、性格変化など症状は様々です。退院後、実生活場面で気づくこともあります。
周りはこれらを脳卒中の後遺症が原因と理解し対応することが大切です。リハビリは、地域の社会資源を積極的に活用し、孤立させないことが重要です。
【麻痺】動き、感じ方の麻痺があります。麻痺の回復が目に見えて起こるのは発症から6ヶ月位ですが、長期間が経過しても、全身の筋力や長く動ける力を鍛えると改善することがあります。
自宅、デイケアなどで活用できる効果的なトレーニングを説明します。
(筋力の鍛え方)筋力とは、立つ、物を持つなどで使う力です。四肢や腹筋を鍛える運動で、10~15回程度して「少しきつい」と感じるトレーニングを3セット、週2~3日で筋力強化が期待できます。トレーニングマシンもありますが、重錘バンド(手首や足首につける重り)など簡易なものでも効果が期待できます。ホームセンターなどで購入できます。
(持久力の鍛え方)持久力とは、歩行など運動を長く続ける力のことです。鍛えるためには歩行訓練や自転車こぎ、起立運動などあります。「少しきつい」と感じる運動が大切で、運動を30分程度(大変なら10分ずつ分けて)、週3~5日行えば持久力が向上し、今までより長く歩けたりします。負担、回数が少なくても、運動するのが大切です。自宅でできるリハビリパンフレット(図1)と自己チェック表を外来に用意していますので、実物はお手に取ってご覧ください。
体の突っ張りを軽減し、動作改善、痛みの軽減を図るボツリヌス治療をリハビリと併用することもできます。
【再発予防】持病の治療が大切です。糖尿病の管理不十分は再発が3倍高く、高血圧の治療で再発は約3割低くなります。
脳卒中予防十か条紹介します。
① 手始めに 高血圧から 治しましょう
② 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
③ 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
④ 予防には タバコを止める 意志を持て
⑤ アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
⑥ 高すぎる コレステロールも 見逃すな
⑦ お食事の 塩分・脂肪 控えめに
⑧ 体力に 合った運動 続けよう
⑨ 万病の 引き金になる 太りすぎ
⑩ 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ
(日本脳卒中協会より)