なるほど健康講座

『 パーキンソン病の薬物療法 』

岡安裕之

パーキンソン病は、中年以降に多くみられる病気で、人口10万人当たり150人ぐらいの患者さんがいると考えられています。手足の震え(左右差があり何もしていない時に強く認められる)、動作がゆっくりになる(無動)、筋肉が硬くなる(筋固縮)バランスが悪く倒れやすくなる(姿勢反射障害)といった運動症状が徐々に出現してきます。原因は脳の深部にある黒質というところで、神経細胞同士の情報のやり取りに使われる神経伝達物質の1つであるドパミンが十分作られなくなり、ドパミンを受け取る線条体の働きの障害から運動がスムーズにいかなくなり症状が出てくることだと分かっています。

パーキンソン病の治療としては薬物療法、リハビリテーション、外科治療があります。

薬としては次にあげるものが主に使われます。

レボドパ(Lドパ)  脳内でドパミン不足が原因ですのでこれを外から補充するために体に入っても脳に入れない(関所がある)ドパミンに代わってその前段階のレボドパが使われます。体の中で脳内に入る前に代謝分解されないように、ドパミン脱炭酸酵素の働きを止める薬と合剤になった薬が用いられることが殆どです。メネシット、ネオドパストン、イーシードパール、マドパー等がそれにあたります。治療効果は高いが長期にわたって使用すると、服用してしばらくすると薬が切れて効果が感じられなくなったり(ウエアリングオフ)、体が意思に反して動いてしまうジスキネジアといった運動合併症が出てきやすくなります。副作用として服用し始めに嘔気を認めることがありナウゼリンが使われる。

ドパミン受容体作動薬  ドパミンアゴニストともいわれる。線条体のドパミン刺激を受け取る受容体を直接刺激する働きがある。レボドパ製剤に比べウエアリングオフやジスキネジアを起こしにくく、若い人で認知症のない人では第一選択薬となることが多い。麦角系と非麦角系に分けられるが稀に弁膜症の発生があり麦角系が新たに使われる事はまずない。ビ・シフロールとその長時間作用型ミラペックス、レキップとその長時間作用型レキップCR、1日一回の貼り薬であるニュープロパッチがある。突発的に眠気が出る事があり、車の運転は禁止です。

MAO-B阻害薬  脳内でドパミンを分解するモノアミン酸化酵素(MAO-B)の働きを抑えてドパミンの濃度を高める。エフピーという名で使われています。病初期にも進行してウエアリングオフが出てきたときにも投与される。抗うつ薬など併用できない薬があるので注意が必要です。

COMT阻害薬  末梢でレボドパの分解をするものとしてドパミン脱炭酸酵素の他にカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)の働きを抑えるものでコムタンとして売られている。

レボドパと一緒に使われるが、初めから2つの酵素阻害薬とレボドパを合剤にしたスタレボも使えるようになった。多くの薬を飲む患者さんには薬の数が減る効用もある。

この他にジスキネジアに効果のあるアマンタジン、震えに使われることのある抗コリン薬(アーテンなど)すくみ足や起立性低血圧に使われることのあるドプス、ウエアリングオフのオフ時間を減らすことのあるゾニサミド、ドパミン刺激と関係なく効果を示すノウリアストといった薬が症状に応じて使われています。

 

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