なるほど健康講座

『次代の地域医療人の育成 ―きずな』

埼玉県立大学
大塚 眞理子 先生

私が看護学生の頃、医師と看護師は「車の両輪」と言われ、互いの専門的な役割をキュア(治療)とケアに区別しようとしていました。しかし、現在は、医師や看護師だけでなく、薬剤師も介護士も栄養士もたくさんの専門職が患者と共に乗りこんでいる「リニアモーターカー」であろうと思うのです。

 昔の診察室では、医師が「肺炎です」と患者様に告げるだけ。看護師が「呼吸つらいですね、車いすもってきますからね」と声をかけます。今は、医師が「息が苦しいですね、レントゲンを見ると肺がこんなに真っ白ですよ、肺炎ですね。処置室で点滴しましょう」と優しくきちんと説明しています。医師も医療をケアとして提供しています。訪問看護師は、患者様のご自宅に伺いケアを提供します。同時に、患者様の症状を観察し医学的な判断をしています。このまま放置しておくと褥瘡になってしまう場合には、予防的な対処もします。看護師もキュアができる知識や技術をもっています。他の専門職も地域医療の場で、自分の持つ医療的な知識や技術を患者様のケアとして提供しています。それができるのは、地域医療人が住民のための医療を提供しようという理念を共有し、日常的に信頼関係を築き、共にキュアとケアを学習しあっているからです。役割分担ではなく、一緒に協力して働いています。

このような地域医療人の存在が、人口減少・超高齢・多死社会に必要となっています。なぜなら、私達はこれまで以上に物質的なつながりよりも、人と人との暖かい絆を求め、支えあう豊かな暮らしを求めていくからです。この要求に応える地域医療人の育成を急がねばなりません。地域医療に携わる多職種の一人一人が、他の職種をパートナーとして認め、尊重し、連携・協働していくことによってそれは実現するのです。すなわち、地域医療人の絆が、地域住民の絆を生み出していくのです。絆でつながった「リニアモーターカー」の乗り心地は快適ですよ。

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