神経内科 医師
岡 安 裕 之
認知症の原因として一番多いものはアルツハイマー病ですので、この病気を中心にお話しします。認知症はゆっくりと、いつとはなしに始まってきます。しかし中には家族の方が早くに気がついて患者さんを診察に連れてこられて、早期発見・早期診断そして早期治療・対策につなげることができることがあります。家族の方は次にお話しするようなことが気になったら、一度医師に相談するとよいと思います。
①昨日或いはさっき言われたことを再度言わないと思い出せない。同じことを何度も何度も尋ねたりすることもある。
②物の名前が出なくなって、あれ、それが会話に増える。
③前関心や興味のあったことに熱心でなくなる。
④いつもしまっている場所を忘れて、全く違う場所を探す。いつもと違うところに置いて何処にしまったか分からなくなる。鍵・財布・印鑑が多いようです。
⑤ある出来事が起こったのがいつか忘れていることがある。
⑥日課のようにしていたことをしなくなる。生活も不活発になってきます。
⑦必要なものを持たずに出かけたり、どこかに置き忘れて帰ってきたりしてしまう。
⑧一度話した話しや冗談を又言うことがある。直前に言ったことなのに繰り返し話したり、今何を話していたか忘れてしまったりすることもあります。
⑨何かしている最中に注意をそらす出来事があった後に、自分が何をしていたか忘れていることがある。
⑩以前行ったことのある場所への行き方を忘れたり、よく知っている建物の中で迷ったりすることがある。場所でなく時間の感覚が不確かになることもよくあります。病気が進行すると家の周りで迷子になって帰れなくなったり、自宅で迷ってトイレに行けなくなったりします。
⑪誰かの言ったことの細部を忘れ、混同して理解していることがある。進むとテレビのドラマの筋が理解できなくなるようなことも起こり、テレビをつけてはいるが、観ていないことが起きてきます。
⑫怒りっぽくなったり、疑り深くなったりという性格変化にまず家族の方が気がつくことも少なくありません。
⑬計算が不確かになる。計算できなくなったことが分かっていると、買い物に行っても大きなお札で支払いをして、お釣りをもらうことで済ませようとし、財布の中が小銭で一杯になることがあります。
⑭それまで出来ていた薬の管理ができなくなって、飲み忘れの薬が大量に、思わぬところから発見されることがあります。
【認知症の予防・生活の注意点】
認知症の早期発見は、その後の治療・生活をどうしていくか対応を考えていく上で重要ですが、予防できればそれに越したことはありません。次の生活の注意を守ることで、年齢とともに増える認知症になる可能性を下げることが知られています。
①知的刺激のある活動を続ける。仕事退職した途端何もしないではいけません。②社会とかかわりを持ち続ける。③健康的食生活。以前からある日本の食事は塩気を除けば悪くありません。④規則正しい運動。歩行、太極拳、ダンスなどがお勧めです。⑤禁煙・節酒。⑥血圧、高脂血症のコントロール。⑦糖尿病があれば治療。放置すると発症の危険2倍!
医師も注意しますので皆さん気を付けて。