なるほど健康講座

『リハビリテーション医学について』

ハーモニークリニック
医師 中井 秀一

【リハビリテーション(Rehabilitation)(以下リハ)とは】
語源はラテン語のrehabilitare で、re-[再び]+habilis[適する]+ation[状態にする]の単語で成り立ち、一度失ったものを再び取り戻すことを意味します。
 歴史的には、中世ヨーロッパで、身分剥奪後に元の地位に復帰することや、教会からの破門の取り消しをリハといい、第一次世界大戦以後は、戦傷兵の職業復帰を含む社会復帰をリハといいました。
 このことから、リハとは“機能回復訓練”だけを示すのでなく、人生の課題、役割を十分に実行する能力の維持と向上を意図します。
【リハビリテーションの対象】
●脳損傷疾患:脳血管疾患、頭部外傷、脳腫瘍、脳炎など
●神経筋疾患:パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多発性硬化症など
●骨・関節疾患:骨折、脊髄損傷、変形性関節症、慢性関節リウマチなど
●呼吸循環器疾患:心筋梗塞、慢性閉塞性肺疾患など
●内部代謝障害疾患:糖尿病など
●小児疾患:脳性麻痺など

【具体的アプローチ】
リハ医療では以下の考え方が利用されます。
 ①生体力学的アプローチ:運動学・運動力学的視点から筋力・関節の動く範囲・運動のバランス・持久力などを評価し、いわゆる運動訓練が行われます。主に運動器疾患が適応です。
 ②発達的アプローチ:発達的視点から人の行動(知覚運動機能、認知機能、日常生活の行動様式)を評価し、改善を図ります。より上位の行動様式の獲得を目指します(例えば、座位まで可能であれば立位の獲得が目標)。小児疾患や、中枢神経疾患に適応され、加齢で失われつつある機能の維持にも利用されます。
 ③リハ的アプローチ:自立の程度を評価し、それを阻害する要因を除いて動作を行う能力を向上させます。代わりの手段を用いて残った機能を最大限に発揮させ、可能な限りの自立が目標です。自助具や装具、車椅子の処方や家屋改造等の環境調整も含まれます。幅広く適応されます。
 ④神経心理学的アプローチ:従来のリハは身体の障害に焦点を当てていますが、認知の障害や心理的な障害に視点を置き、その評価を行い治療や心理的に介入して社会への復帰を促進させます。脳障害に広く適応されます。

【当院のリハビリテーション】
上記のアプローチを適宜併用し、多職種連携によるリハを提案します。在宅リハに関してはハーモニー便り58号の「在宅リハビリ」をご覧ください。
外来ではマイクロウェーブ(温熱作用)、低周波(筋痛改善)、ウォーターベッド(マッサージ効果)の物理療法が可能です。また脳卒中の上肢痙縮を中心にボツリヌス注射を行い、つっぱりを軽減することでリハを向上させることもあります。機能回復訓練だけでなく、身体状況と環境変化に合わせたリハを一緒に考えましょう。皆さんがより良い生活が送れますように。

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