なるほど健康講座

『自宅で行う脳卒中のリハビリテーションと再発予防』

お知らせ    2016年3月8日

ハーモニークリニック 内科 中井秀一

脳卒中の方が、急性期→回復期→維持期の切れ目ない継続的な医療ケアを受けることはとても大切です。急性期とは発病間もなく治療を行う時期、回復期は病状も一応安定し、リハビリを本格的に開始する時期です。維持期は麻痺の回復や身の回り動作も改善し、体の動きや生活を維持していく時期で、今回はこの時期のお話しをします。

【嚥下障害】食物が上手に食べられない障害で誤嚥の原因にもなります。大切なことは歯磨きで、口の中がきれいなら多少誤嚥しても気管に雑菌が入りにくく、肺炎予防になります。また嚥下障害の程度に合わせ水分にとろみをつけたり、丸呑み可能なゼリーを使用したり工夫します。発声練習もリハビリになります。

【高次脳機能障害】会話ができない失語症、物を認識できない失認、着替えができない失行、記憶障害、注意が続かない、性格変化など症状は様々です。退院後、実生活場面で気づくこともあります。

周りはこれらを脳卒中の後遺症が原因と理解し対応することが大切です。リハビリは、地域の社会資源を積極的に活用し、孤立させないことが重要です。

【麻痺】動き、感じ方の麻痺があります。麻痺の回復が目に見えて起こるのは発症から6ヶ月位ですが、長期間が経過しても、全身の筋力や長く動ける力を鍛えると改善することがあります。

自宅、デイケアなどで活用できる効果的なトレーニングを説明します。

(筋力の鍛え方)筋力とは、立つ、物を持つなどで使う力です。四肢や腹筋を鍛える運動で、10~15回程度して「少しきつい」と感じるトレーニングを3セット、週2~3日で筋力強化が期待できます。トレーニングマシンもありますが、重錘バンド(手首や足首につける重り)など簡易なものでも効果が期待できます。ホームセンターなどで購入できます。

(持久力の鍛え方)持久力とは、歩行など運動を長く続ける力のことです。鍛えるためには歩行訓練や自転車こぎ、起立運動などあります。「少しきつい」と感じる運動が大切で、運動を30分程度(大変なら10分ずつ分けて)、週3~5日行えば持久力が向上し、今までより長く歩けたりします。負担、回数が少なくても、運動するのが大切です。自宅でできるリハビリパンフレット(図1)と自己チェック表を外来に用意していますので、実物はお手に取ってご覧ください。

 体の突っ張りを軽減し、動作改善、痛みの軽減を図るボツリヌス治療をリハビリと併用することもできます。

【再発予防】持病の治療が大切です。糖尿病の管理不十分は再発が3倍高く、高血圧の治療で再発は約3割低くなります。

 脳卒中予防十か条紹介します。

① 手始めに 高血圧から 治しましょう

② 糖尿病 放っておいたら 悔い残る

③ 不整脈 見つかり次第 すぐ受診

④ 予防には タバコを止める 意志を持て

⑤ アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒

⑥ 高すぎる コレステロールも 見逃すな

⑦ お食事の 塩分・脂肪 控えめに

⑧ 体力に 合った運動 続けよう

⑨ 万病の 引き金になる 太りすぎ

⑩ 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ

(日本脳卒中協会より)

無題

 

スギ花粉症の舌下免疫療法(シダトレン) 体験記

お知らせ    2015年11月10日

毎年、スギ花粉が飛ぶ季節になると、目のかゆみやくしゃみが止まらず、つらい思いをしていらっしゃる方は少なくないと思います。私もつらいアレルギー症状に悩まされており、抗アレルギー薬を服用してきました。そのような中、「アレルゲン免疫療法」という新たな治療法が認可されたことを知りました。

 

スギ花粉症の場合、スギ花粉がアレルギーの原因(アレルゲン)となってくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどのアレルギー症状が生じます。「アレルゲン免疫療法」は、このアレルゲンを少量ずつ体に入れることで、体をアレルゲンに慣らしていき、アレルギー症状を和らげていく治療法です。後ほど詳しく記しますが、この治療法では「シダトレン」という液体の薬を舌の下に滴下して服用します。このことから「舌下免疫療法」とも呼ばれています。

 

2015年11月より、医療法人明医研ハーモニークリニックでも、この舌下免疫療法が実施できるようになりました。ちょうど良いきっかけができたと思い、私も11月から治療を始めることにしました。

 

つらいスギ花粉症に悩み、舌下免疫療法に興味を持たれている方や、どのような治療法か不安を持たれている方にとって、少しでも参考になればと思い、私の治療体験を記します。なお、この記録は、私個人の体験を記したものとなりますので、お読みいただく皆さまとの受診環境の違いや、体質なども含めた個人差がある点につきましては、ご理解いただけますようお願いいたします。

 

【初回通院; 医師による診察、説明と検査】

舌下免疫療法を受けるに先立ち、スギ花粉に対してアレルギーを持っているかを判断してもらわなくてはなりません。この判断をするために、外来を受診する必要があります。

 

クリニックの外来受付に行き、舌下免疫療法を受けたい旨を受付スタッフに伝えますと、問診票を渡されます。スギ花粉が飛散する時期の症状や、病歴・既往歴の有無、服薬中の薬などに関する質問に答え、診察室からの呼び出しを待ちます。

 

診察室では、まず問診票に記載した内容に関して医師から質問をされます。私の既往症や服薬中の薬にも問題が無かったようでした。その後、聴診器によりひととおり体調がチェックされた後、アレルゲン免疫療法に関する説明が始まりました。

 

主な説明の内容は、花粉飛散期も含めて3年程度に渡る長期間の治療を継続できるか、シダトレンという薬剤を毎日服用できるか、月1回の受診が可能かということと、副作用および対処法についてでした。

 

シダトレンが入った容器は、はじめの2週間(増量期)とその後(維持期)で形状が変わります。増量期の服用方法は、プッシュ型容器に入った薬剤を1日1回、舌下に滴下して2分間そのままの状態を維持した後に飲み込みます(唾なども飲まずにじっとしています)。アレルギー症状の改善状況によって変わるようですが、この日課を3年間は続ける必要があります。

 

担当医からは、治療を継続しようと思う意志が大切で、中断する患者も少なくないと伝えられました。さすがにこの説明を聞いたとき、三日坊主の私が続けられるか不安になりましたが、毎日の歯磨きのタイミングなど、既に習慣となっている動作と一緒に行うと良いというアドバイスをいただきました。

 

服用後最初の1~2年間は、花粉症の時期になるとアレルギー症状が出るようなのですが、あまりにも花粉症の症状が強く出たときには、医師の指示に従った上で抗ヒスタミン薬を併用してよいそうです。

 

 副作用としては、口内炎や舌下の腫れ、喉のかゆみ、耳のかゆみ、頭痛などが現れる恐れや、アナフィラキシーという急性の過敏反応が生じる可能性があること、また体調不良時はすぐに医師の診察を受けるようにとの説明がありました。

 
黄色パンフ

 なお、上記の説明内容や注意事項は、初回通院の際にいただくことができる冊子(下記の写真)にも細かく記載されており、自宅に帰ってから確認することができました。

 

 

 

 

 

どのような治療法にも利点とリスクがあると思いますが、舌下免疫療法においても、薬の服用により症状が和らぐという利点とあわせて、治療に伴うリスク要素があるようです。この治療の利点とリスクをどう考えるかは人それぞれで異なると思いますが、アレルゲンを皮下注射する従来の皮下免疫療法と比較して副作用もほとんどないということで、私は治療をお願いすることにしました。

 

 次は、診察室を出て血液検査を取るために処置室へ移動します。すぎやヤケヒョウダニ、ヒノキ、ブタクサなど代表的なアレルゲンをいくつかまとめて検査するための採血をうけました。検査結果が出るまでに約1週間かかるとのことです。受付で次回の予約を取り、会計を済ませて初回通院を終えました。

 

【通院2回目: 医師による診察と薬剤の服用】

 診察室に入ると、まず前回の血液検査の結果が説明されます。私の場合はスギ花粉と ヤケヒョウダニにアレルギーがあるということで、スギ花粉症であることが判定されました。

 

舌下免疫療法を行う意志を伝え、治療同意の書類に署名した後、血圧測定や聴診、口腔内の確認が行われます。私の場合、特に問題なく1回目の服用をする許可が得られました。担当医に伺ったところ、当日たまたま口内炎ができてしまっていたり、喘息発作があったりした場合には、薬の服用が延期されることもあるとのことです。

 

その後、シダトレンの処方箋が医師から渡されます。一旦、ハーモニークリニックを出て、近くのサン&グリーン薬局に行き、シダトレンを受け取ってから再びクリニックに戻りました。この部分の流れは、クリニックによって異なると思います。

 

青

受付スタッフに薬を受け取ってきた旨を伝えると、処置室へ案内されました。看護師が「シダトレンを服用される患者さんへ」というパンフレットを参照しながら、服用手順や、2日目以降の服用時の注意点を詳しく教えてくれます。

 

 

 

 

 

看護師のアドバイスを受けながら、用意していただいた鏡に顔を映し、舌の裏を見えるように上げて、舌下部分に薬剤を1回プッシュします。鏡があったためか、プッシュは難しくありませんでした。シダトレンには、グリセリンが含まれているためにピリピリと感じることがあるとパンフレットに書いてありましたが、私の場合はそのような感じはなく、ほんのりと甘いような、薄い味を感じました。これは個人差が大きいのではないかと思います。

 

処置室で2分間、唾を飲み込まないように静かに過ごします。2分経過すると看護師が知らせてくれて、薬をそのまま飲みこむように指示されます。副作用が生じないかを確認するため、その後30分間は待合室で待機し、何か異変があったらクリニックのスタッフに連絡するように伝えられました。

 

待合の椅子に座り、所定の時間が過ぎるのを待っていますと、およそ10分おきに看護師が様子を確認してくれました。特に自覚する症状も出ませんでしたし、また顔色なども変化が無かったようです。初回の服用時だけではありますが、30分間待ち、副作用が起きていないかを確認していただかなくてはなりません。私の場合は、好みの雑誌がクリニック内にありましたので、待ち時間が気になりませんでしたが、これから舌下免疫療法を受けようとされる方は、初回の服用時にお気に入りの本などを持参されることをお勧めします。

 

時間になるとクリニックのスタッフが来て、初回服用時の確認が完了した旨が伝えられます。受付で2週間後の受診予約をして会計を終え、通院2回目が終わりました。

 

【自宅での服用を開始】

 特に問題がなければ、2回目の診療の翌日からは2週間先までクリニックに行くことはありません。2回目の服薬からは自宅で行うことになります。

 

 

無題

ハーモニークリニックの先生から、シダトレン服用者向けのiPhone用アプリがあると聞いていましたので、早速ダウンロードしてみました。App Store「SLITサポート(スギ花粉症)」という名称でタウンロードできます。毎日、薬を舌下に滴下して2分間待つためのタイマー機能や、飲み忘れ防止のアラーム機能、日記、グラフ、ミニゲームが利用可能な優れものです

このアプリも利用しながら、自宅で2回目の服用をしてみました。既にクリニックで経験しているので、特に支障なく終わりました。普段は忘れずに服用できそうですが、出張や旅行をする際に忘れないように気を付けたいと思います。服用から2週間を過ぎると、プッシュボトルタイプから、1回分使い切りのパックタイプ(写真中)に変わるので、移動時の持ち運びが楽になりそうです。

 

 

 

 

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『 おそるべし歯周病 』

お知らせ    2015年9月19日

ハーモニークリニック 内科 松林洋志

■世界中で最も多い細菌感染症

 歯周病は世界中で最も多い細菌感染症であり、中高年において歯を失う原因の第一位としても知られています。虫歯と違って痛みがない事が多く、いつの間にか進行します。口腔内が不衛生になると歯垢(しこう)が歯に付着します。「歯の垢(あか)」と書きますが、その実態は「細菌の塊」です。慢性的な菌の感染は、いつしか歯槽骨を破壊し、土台を失った歯は、抜けてしまうのです。困ったものですが、実はこの歯周病、それだけでは終わりません。多くの研究により明らかとなった、歯周病の真の恐ろしさが今、注目を集めています。

■歯周病が糖尿病を悪化させる

歯周病に罹患する事で、動脈硬化や糖尿病悪化など、全身に悪影響が及ぶ事が判明してきました。その中でも特に糖尿病との関連性が注目されています。歯肉の奥に歯周病菌が侵入する時、そこでは免疫を司るマクロファージと菌との攻防が繰り広げられています。この時に産生されるインターロイキン6やTNF-αと呼ばれる物質が、インスリンの働きを阻害してしまうのです。インスリンの働きが鈍くなるので、糖尿病は悪化してしまいます。そしてあろうことか、糖尿病は免疫力を低下させる病気でもありますので、糖尿病が悪化すると歯周病も悪化します。歯周病が悪化するので、糖尿病はさらに悪化するという悪循環に陥るのです。また、心筋梗塞に至った冠動脈から、口腔内にしか存在しないはずの歯周病菌が見つかったという報告もあり、歯周病菌が血液の中に侵入する事で動脈硬化を悪化させる可能性が示唆されています。

■一石二鳥以上の治療効果

40代になると、程度の差はあれども実に80%の人に歯周病があると言われています。決して他人事ではありません。歯科で定期的な歯の診察を受ける事、歯周病のリスクを回避する事、丁寧な歯磨きをする事が肝要です。喫煙は糖尿病と並ぶ歯周病の二大リスクなので、禁煙する事も大切です。初期の段階では炎症は歯肉に止まっており、適切な歯科治療で完治させられます。既に重度の歯周病に至っていても、適切な治療により全身状態が改善する事もありますので、まずは歯科に相談してみることです。糖尿病と歯周病が密接に関連しているという事は、近年の多くの研究により、疑いなき事実となりました。この事実はつまり、「歯周病を良くすれば、糖尿病が改善する」とも捉えられます。実際に、色んな薬を飲んでもなかなかHbA1cが低下しない糖尿病患者さんにおいて、歯周病を完治させたらHbA1cがグっと低下したという例は多数報告されています。歯周病を治すことによる恩恵は、一石二鳥以上のようです。これを機に自分の歯としっかり向き合って、歯ッピーライフを手に入れましょう。

 

『 パーキンソン病の薬物療法 』

なるほど健康講座    2015年6月1日

岡安裕之

パーキンソン病は、中年以降に多くみられる病気で、人口10万人当たり150人ぐらいの患者さんがいると考えられています。手足の震え(左右差があり何もしていない時に強く認められる)、動作がゆっくりになる(無動)、筋肉が硬くなる(筋固縮)バランスが悪く倒れやすくなる(姿勢反射障害)といった運動症状が徐々に出現してきます。原因は脳の深部にある黒質というところで、神経細胞同士の情報のやり取りに使われる神経伝達物質の1つであるドパミンが十分作られなくなり、ドパミンを受け取る線条体の働きの障害から運動がスムーズにいかなくなり症状が出てくることだと分かっています。

パーキンソン病の治療としては薬物療法、リハビリテーション、外科治療があります。

薬としては次にあげるものが主に使われます。

レボドパ(Lドパ)  脳内でドパミン不足が原因ですのでこれを外から補充するために体に入っても脳に入れない(関所がある)ドパミンに代わってその前段階のレボドパが使われます。体の中で脳内に入る前に代謝分解されないように、ドパミン脱炭酸酵素の働きを止める薬と合剤になった薬が用いられることが殆どです。メネシット、ネオドパストン、イーシードパール、マドパー等がそれにあたります。治療効果は高いが長期にわたって使用すると、服用してしばらくすると薬が切れて効果が感じられなくなったり(ウエアリングオフ)、体が意思に反して動いてしまうジスキネジアといった運動合併症が出てきやすくなります。副作用として服用し始めに嘔気を認めることがありナウゼリンが使われる。

ドパミン受容体作動薬  ドパミンアゴニストともいわれる。線条体のドパミン刺激を受け取る受容体を直接刺激する働きがある。レボドパ製剤に比べウエアリングオフやジスキネジアを起こしにくく、若い人で認知症のない人では第一選択薬となることが多い。麦角系と非麦角系に分けられるが稀に弁膜症の発生があり麦角系が新たに使われる事はまずない。ビ・シフロールとその長時間作用型ミラペックス、レキップとその長時間作用型レキップCR、1日一回の貼り薬であるニュープロパッチがある。突発的に眠気が出る事があり、車の運転は禁止です。

MAO-B阻害薬  脳内でドパミンを分解するモノアミン酸化酵素(MAO-B)の働きを抑えてドパミンの濃度を高める。エフピーという名で使われています。病初期にも進行してウエアリングオフが出てきたときにも投与される。抗うつ薬など併用できない薬があるので注意が必要です。

COMT阻害薬  末梢でレボドパの分解をするものとしてドパミン脱炭酸酵素の他にカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)の働きを抑えるものでコムタンとして売られている。

レボドパと一緒に使われるが、初めから2つの酵素阻害薬とレボドパを合剤にしたスタレボも使えるようになった。多くの薬を飲む患者さんには薬の数が減る効用もある。

この他にジスキネジアに効果のあるアマンタジン、震えに使われることのある抗コリン薬(アーテンなど)すくみ足や起立性低血圧に使われることのあるドプス、ウエアリングオフのオフ時間を減らすことのあるゾニサミド、ドパミン刺激と関係なく効果を示すノウリアストといった薬が症状に応じて使われています。

 

『慢性硬膜下血腫』

なるほど健康講座    2015年3月1日

ハーモニークリニック 医局長 大和康彦

 

慢性硬膜下血腫は、日常の診療の中で次のようなかたちで見つかります。

「数日前より何だか様子がおかしい」と付き添いのご家族が、高齢の患者さんを連れて相談に来ました。何がおかしいのかというと、何となくふらつきやすくなって、数日前から呆けてしまって。脳卒中のように突然始まったというよりは、数日前からゆっくりと始まったようです。よく話を伺うと、1ヶ月ほど前に転んで少し頭を怪我したことがあるとのこと。患者さんに詳細を伺っても、あまりよく覚えていないようです。

これが典型的な慢性硬膜下血腫の症状と、診療現場でのやりとりです。頭部CT検査では図のような「脳の表面を覆う三日月型の血腫」を認め、慢性硬膜下血腫と診断し、治療の相談となります。

慢性硬膜下血腫とは、頭部外傷後慢性期(通常3週間~数ヶ月後)に頭部の頭蓋骨の下にある脳を覆っている硬膜と脳との隙間に血(血腫)が貯まる病気です。高齢で男性に多くみられ、頭部外傷があったかどうか不明なケースも10~30%に存在します。発症に影響する因子として、①大酒家、②脳に萎縮がある、③出血傾向や血液をサラサラにする種類の薬を内服している、④透析中、などが挙げられます。

血腫が脳を圧迫することで様々な症状がみられます。片側の麻痺やしびれ、痙攣、言葉が上手く話せない、認知症や意欲低下などの精神障害、失禁、頭痛や嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状などが主な症状です。認知症だけで発症する慢性硬膜下血腫もあり、比較的急に呆け症状が見られた場合には、慢性硬膜下血腫を疑うことが重要です。

小さな慢性硬膜下血腫では、血腫内の血液が自然に吸収されるため、多くは治療の必要がありません。大きな血腫で様々な症状が出ている場合には、穿頭血腫洗浄ドレナージ術という局所麻酔で行える手術により、症状をもたらしている脳の圧迫はすぐに解除でき、9割は治癒に向かいます。しかし術後に血腫が再貯留し、再度手術が必要になる例もあります。

高齢化社会の中で、慢性硬膜下血腫症例は増加傾向にあります。正しく診断がなされ、タイミングを逸することなく治療が行われれば完治する予後のよい疾患です。ハーモニークリニック・デュエット内科クリニックともに、症状の確認や頭部CT検査による評価をすることができますので、ご心配な方はお気軽にご相談下さい。

『いつまでも健康でいるには』

なるほど健康講座    2014年12月1日

デュエット内科クリニック
院長 阿部直

ヨーグルト、チョコレート、赤ワインなど健康に良いとされる食品は数多くあるが、これを食べていれば健康で長生きできるというような万能食品はなく、バランスよく適量を食べることが大切である。ここでは、食品に限らず、健康で長生きする方法、しかも医学的に明らかにされていることを紹介したい。

健康で長生きするための生活習慣:ヨーロッパで45~79歳の男女2万人あまりを対象に平均11年間観察した研究がある。この研究では4つの生活習慣に着目した。すなわち、①喫煙していない、②運動している、③酒類を多飲していない(ビールならば1日平均中瓶1本まで、日本酒ならば1合弱)、④野菜、果物を食べている。これらの良い生活習慣を数多く持っている人ほど、死亡率が低く、長生きすることが明らかにされた。また、これらの4つの良い生活習慣を持っている人に比べ、いずれの生活習慣も持っていない人の死亡率は4.0倍で、寿命に換算して14年間短くなることが報告された(PloS Medicine 2008)。
認知症になりにくい生活習慣:認知症の予防には、体重・血糖・血圧・脂質(コレステロールや中性脂肪)のコントロール、禁煙、節酒、健康的な食生活、運動に加えて、知的刺激に満ちた活動を行い、社会とのかかわりを持ち続けることが重要であることが知られている。

死の五重奏:心筋梗塞・脳卒中などの血管系の病気に対する危険因子として、5つの因子が知られている。①コレステロールや中性脂肪が高いなどの高脂血症、②高血圧、③肥満、④糖尿病、の4つの生活習慣病と⑤喫煙である。これらの5つの因子は、死へのメロディを奏でる、死の五重奏と言われ、これらの因子の数が増えるに従い、心筋梗塞、脳卒中になる確率が高くなる。これらの因子のすべては、生活習慣の改善や治療により、除去、あるいはコントロールできる。

寿命と健康寿命:日本人の平均寿命は男性79.5歳、女性86.3歳である。人生の終末期には、体が弱って介護を受けての生活、あるいは、病気等で寝たきりとなることが多い。介護を受けずに、生まれてから健康的に生きられる期間を健康寿命と呼び年齢で表す。日本人の健康寿命は平均寿命よりずっと短く、男性70.4歳、女性73.6歳である。寿命と健康寿命の差が介護を受ける平均の期間である。これは、男性では、9.2年間、女性では12.7年間であり、男女とも約10年間と非常に長い。

まとめ:以上、生活習慣の改善と適切な治療により、健康寿命を延ばし、いつまでも健康でいたいものである。また、現在病気療養中の方は、さらなる病気の発生を防止できれば嬉しく思う。

『骨粗しょう症について』

なるほど健康講座    2014年9月1日

ハーモニークリニック
医師 市川 聡子

骨粗しょう症とは、骨が弱くなり、骨折しやすくなる骨の病気です。
 骨の中では、骨の量を一定に保つために、古い骨を壊して(骨吸収といいます)、新しい骨を作る(骨形成といいます)、という作業を行っています。このバランスが取れているうちは、骨の量は正常に保たれていますが、骨が壊される方が多くなってしまい、新しい骨を作るのが追い付かなってしまうと、骨の量が減ってしまいます。年を取ると、新しい骨を作る細胞の働きが低下したり、閉経後には女性ホルモンの量が少なくなることで、古くなった骨を壊す細胞の働きが活発化してしまいます。加齢に伴ってカルシウムを吸収する力が落ちてしまうのも、骨密度の低下につながっています。また、老化だけでなく、糖尿病や慢性腎臓病などの生活習慣病によっても、骨を作る際の梁(はり)の質が悪くなり、骨の質が低下します。

 骨粗しょう症になると、転んだり、しりもちをついた際に、股の付け根の骨(大腿骨近位部)、背骨(椎骨)の骨折が起こりやすくなります。また、手首の骨、腕の付け根の骨、骨盤や肋骨、脚の骨などの骨折も、骨が弱くなると起こりやすくなります。治るまでに時間がかかり、その間に身体の機能が衰え、介護が必要になったり、その後の活動度にも影響を及ぼすため、骨折を予防することが骨粗しょう症の治療で大事になります。

骨粗しょう症を予防するには、まず、骨を作る材料や骨を作る助けとなる、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKをバランスよく食事に取り入れましょう。(外来に食事についてのパンフレットをご用意していますので、ご希望の方はお申し出ください。)次に、運動が大切です。運動によって骨に適度な圧力がかかることが、骨にカルシウムを蓄える助けとなります。また、筋力やバランス力を鍛えることで、転ぶことを防ぎ、骨折を予防することにつながります。ウォーキングで骨密度上昇効果があったという研究結果もでています。それから、喫煙や多量の飲酒は、腸からのカルシウム吸収を妨げ、骨折する危険度が高くなるという報告があります。禁煙、節酒は他の病気の予防にもつながりますので、健康づくりの一環としてぜひ取り組んでみてください。

骨粗しょう症の治療に使われる薬には、腸からのカルシウムの吸収を促す薬、骨形成を促進する薬、骨吸収を抑制する薬などがありますが、患者さんの状態に応じて、治療薬を選んでいきます。

骨の状態を知るための第一歩として、骨密度検査を受けてみませんか。今まで一回も検査を受けたことのない方、前回の検査から半年~1年以上たっている方は、ぜひ担当医にお声がけください。

『リハビリテーション医学について』

なるほど健康講座    2014年6月1日

ハーモニークリニック
医師 中井 秀一

【リハビリテーション(Rehabilitation)(以下リハ)とは】
語源はラテン語のrehabilitare で、re-[再び]+habilis[適する]+ation[状態にする]の単語で成り立ち、一度失ったものを再び取り戻すことを意味します。
 歴史的には、中世ヨーロッパで、身分剥奪後に元の地位に復帰することや、教会からの破門の取り消しをリハといい、第一次世界大戦以後は、戦傷兵の職業復帰を含む社会復帰をリハといいました。
 このことから、リハとは“機能回復訓練”だけを示すのでなく、人生の課題、役割を十分に実行する能力の維持と向上を意図します。
【リハビリテーションの対象】
●脳損傷疾患:脳血管疾患、頭部外傷、脳腫瘍、脳炎など
●神経筋疾患:パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多発性硬化症など
●骨・関節疾患:骨折、脊髄損傷、変形性関節症、慢性関節リウマチなど
●呼吸循環器疾患:心筋梗塞、慢性閉塞性肺疾患など
●内部代謝障害疾患:糖尿病など
●小児疾患:脳性麻痺など

【具体的アプローチ】
リハ医療では以下の考え方が利用されます。
 ①生体力学的アプローチ:運動学・運動力学的視点から筋力・関節の動く範囲・運動のバランス・持久力などを評価し、いわゆる運動訓練が行われます。主に運動器疾患が適応です。
 ②発達的アプローチ:発達的視点から人の行動(知覚運動機能、認知機能、日常生活の行動様式)を評価し、改善を図ります。より上位の行動様式の獲得を目指します(例えば、座位まで可能であれば立位の獲得が目標)。小児疾患や、中枢神経疾患に適応され、加齢で失われつつある機能の維持にも利用されます。
 ③リハ的アプローチ:自立の程度を評価し、それを阻害する要因を除いて動作を行う能力を向上させます。代わりの手段を用いて残った機能を最大限に発揮させ、可能な限りの自立が目標です。自助具や装具、車椅子の処方や家屋改造等の環境調整も含まれます。幅広く適応されます。
 ④神経心理学的アプローチ:従来のリハは身体の障害に焦点を当てていますが、認知の障害や心理的な障害に視点を置き、その評価を行い治療や心理的に介入して社会への復帰を促進させます。脳障害に広く適応されます。

【当院のリハビリテーション】
上記のアプローチを適宜併用し、多職種連携によるリハを提案します。在宅リハに関してはハーモニー便り58号の「在宅リハビリ」をご覧ください。
外来ではマイクロウェーブ(温熱作用)、低周波(筋痛改善)、ウォーターベッド(マッサージ効果)の物理療法が可能です。また脳卒中の上肢痙縮を中心にボツリヌス注射を行い、つっぱりを軽減することでリハを向上させることもあります。機能回復訓練だけでなく、身体状況と環境変化に合わせたリハを一緒に考えましょう。皆さんがより良い生活が送れますように。

『認知症 こんなことに気をつけよう』

なるほど健康講座    2014年3月11日

神経内科 医師
岡 安 裕 之

認知症の原因として一番多いものはアルツハイマー病ですので、この病気を中心にお話しします。認知症はゆっくりと、いつとはなしに始まってきます。しかし中には家族の方が早くに気がついて患者さんを診察に連れてこられて、早期発見・早期診断そして早期治療・対策につなげることができることがあります。家族の方は次にお話しするようなことが気になったら、一度医師に相談するとよいと思います。

 ①昨日或いはさっき言われたことを再度言わないと思い出せない。同じことを何度も何度も尋ねたりすることもある。
②物の名前が出なくなって、あれ、それが会話に増える。
③前関心や興味のあったことに熱心でなくなる。
④いつもしまっている場所を忘れて、全く違う場所を探す。いつもと違うところに置いて何処にしまったか分からなくなる。鍵・財布・印鑑が多いようです。
⑤ある出来事が起こったのがいつか忘れていることがある。
⑥日課のようにしていたことをしなくなる。生活も不活発になってきます。
⑦必要なものを持たずに出かけたり、どこかに置き忘れて帰ってきたりしてしまう。
⑧一度話した話しや冗談を又言うことがある。直前に言ったことなのに繰り返し話したり、今何を話していたか忘れてしまったりすることもあります。
⑨何かしている最中に注意をそらす出来事があった後に、自分が何をしていたか忘れていることがある。
⑩以前行ったことのある場所への行き方を忘れたり、よく知っている建物の中で迷ったりすることがある。場所でなく時間の感覚が不確かになることもよくあります。病気が進行すると家の周りで迷子になって帰れなくなったり、自宅で迷ってトイレに行けなくなったりします。
⑪誰かの言ったことの細部を忘れ、混同して理解していることがある。進むとテレビのドラマの筋が理解できなくなるようなことも起こり、テレビをつけてはいるが、観ていないことが起きてきます。
⑫怒りっぽくなったり、疑り深くなったりという性格変化にまず家族の方が気がつくことも少なくありません。
⑬計算が不確かになる。計算できなくなったことが分かっていると、買い物に行っても大きなお札で支払いをして、お釣りをもらうことで済ませようとし、財布の中が小銭で一杯になることがあります。
⑭それまで出来ていた薬の管理ができなくなって、飲み忘れの薬が大量に、思わぬところから発見されることがあります。

 

【認知症の予防・生活の注意点】

認知症の早期発見は、その後の治療・生活をどうしていくか対応を考えていく上で重要ですが、予防できればそれに越したことはありません。次の生活の注意を守ることで、年齢とともに増える認知症になる可能性を下げることが知られています。

①知的刺激のある活動を続ける。仕事退職した途端何もしないではいけません。②社会とかかわりを持ち続ける。③健康的食生活。以前からある日本の食事は塩気を除けば悪くありません。④規則正しい運動。歩行、太極拳、ダンスなどがお勧めです。⑤禁煙・節酒。⑥血圧、高脂血症のコントロール。⑦糖尿病があれば治療。放置すると発症の危険2倍!

医師も注意しますので皆さん気を付けて。

『次代の地域医療人の育成 ―きずな』

なるほど健康講座    2013年12月1日

埼玉県立大学
大塚 眞理子 先生

私が看護学生の頃、医師と看護師は「車の両輪」と言われ、互いの専門的な役割をキュア(治療)とケアに区別しようとしていました。しかし、現在は、医師や看護師だけでなく、薬剤師も介護士も栄養士もたくさんの専門職が患者と共に乗りこんでいる「リニアモーターカー」であろうと思うのです。

 昔の診察室では、医師が「肺炎です」と患者様に告げるだけ。看護師が「呼吸つらいですね、車いすもってきますからね」と声をかけます。今は、医師が「息が苦しいですね、レントゲンを見ると肺がこんなに真っ白ですよ、肺炎ですね。処置室で点滴しましょう」と優しくきちんと説明しています。医師も医療をケアとして提供しています。訪問看護師は、患者様のご自宅に伺いケアを提供します。同時に、患者様の症状を観察し医学的な判断をしています。このまま放置しておくと褥瘡になってしまう場合には、予防的な対処もします。看護師もキュアができる知識や技術をもっています。他の専門職も地域医療の場で、自分の持つ医療的な知識や技術を患者様のケアとして提供しています。それができるのは、地域医療人が住民のための医療を提供しようという理念を共有し、日常的に信頼関係を築き、共にキュアとケアを学習しあっているからです。役割分担ではなく、一緒に協力して働いています。

このような地域医療人の存在が、人口減少・超高齢・多死社会に必要となっています。なぜなら、私達はこれまで以上に物質的なつながりよりも、人と人との暖かい絆を求め、支えあう豊かな暮らしを求めていくからです。この要求に応える地域医療人の育成を急がねばなりません。地域医療に携わる多職種の一人一人が、他の職種をパートナーとして認め、尊重し、連携・協働していくことによってそれは実現するのです。すなわち、地域医療人の絆が、地域住民の絆を生み出していくのです。絆でつながった「リニアモーターカー」の乗り心地は快適ですよ。